[イーデイリー スターinYUN GI BACK 記者] 「ご注文のコーヒーをご用意いたしました。」 スターバックスでコーヒーを作っていた20代のバリスタの頭の中は、映画のことばかりでした。 仕事を終えるとノートパソコンを開き、合間を縫って脚本を書いていました。有名な監督でも、映画界の御曹司でもありませんでした。そうして完成させた1本の映画にかかった費用は75万ドル(約10億ウォン)でした。ところが、この映画は世界中の映画館で、なんと4億8000万ドル(約6700億ウォン)の興行収入を記録しました。 映画『オブセッション』を監督したカリー・バッカー監督(左)が、俳優たちと話をしています。(写真=ユニバーサル・ピクチャーズ) 今年、ハリウッドで最高の「逆転劇」を書き上げたホラー映画『オブセッション』のカリー・バッカー監督の話です。1999年生まれの彼は、ほんの数年前まではスターバックスのバリスタとして働きながら、映画監督を夢見ていた無名のユーチューバーでした。 バッカー監督は、最初から映画界のエリートコースを歩んできた人物ではありませんでした。友人のクーパー・トムリンソンと共にYouTubeチャンネル『That’s a Bad Idea』を運営し、コメディ動画や低予算の短編映画を制作していました。カメラを手に動画を撮影していましたが、それだけでは生計を立てるのは困難でした。結局、スターバックスでコーヒーを淹れながら、映画監督の夢を追い続けました。 そんな中、チャンスが訪れました。2023年に公開されたホラー短編『ザ・チェア』(The Chair)が、ネット上で口コミで広まりました。その映像に注目したプロデューサーのジェームズ・ハリスが長編化を提案しましたが、バッカーが持ち出したのは別の話でした。それは、彼が合間を縫って書き溜めてきた『オブセッション』でした。 映画『オブセッション』のポスター。(写真=ユニバーサル・ピクチャーズ)設定は単純でした。長年の友人に片思いをしている男性が、何でも一つだけ願いを叶えてくれるアイテムを手に入れます。彼が願ったのはたった一つ。「彼女が僕を世界で一番愛してくれるように」という願いでした。問題は、その願いが「あまりにも完璧に」叶ってしまったことでした。愛は執着となり、執着は狂気へと暴走していきます。 独創的なアイデアに比べ、制作環境は厳しいものでした。制作費は75万ドル、韓国ウォンに換算すると約10億ウォンに過ぎませんでした。撮影に与えられた時間もわずか20日間でした。バーカー監督は脚本と演出、さらには編集まで自ら担当しました。華やかなスターキャストや巨大なセットの代わりに、アイデアと俳優たちの演技、そして不快感をしつこく引き延ばす演出に勝負を賭けたのです。 結果は、誰も予想しなかった方向へと流れました。『オブセッション』は公開後、観客の間で口コミが広がり始め、ソーシャルメディア(SNS)上で映画のシーンやセリフがミームとして拡散され、興行に火がつきました。通常、公開初週末以降は観客数が減少するものの、時間が経つにつれて話題性が高まるという異例の展開を見せました。