[イーデイリーKIM SAE-MI 記者] 「これまで一度も人に投与されたことのない革新的な新薬の場合、国内で初期臨床試験を進めることは現実的に容易ではありません。このため、少なからぬ国内のバイオ企業が国内での臨床試験を断念し、海外に進出しています。このような状況が続けば、韓国が新薬開発の強国へと飛躍することは遠い道のりだと考えます。」
バイオ業界のある元老の指摘です。実際、Bio Solution Co.,Ltd.(086820)は昨年2月、食品医薬品安全処に同種軟骨細胞治療薬「カティロイド」の臨床第1/2相試験計画(IND)を提出しましたが、非臨床・毒性試験資料などに対する追加補完の要請を経て、同年6月に最終的に却下されました。 バイオソリューションは、食品医薬品安全処に異議を申し立てたり、国内でのINDに再挑戦したりする代わりに、オーストラリアなどの海外で臨床試験を推進する方向へと舵を切りました。
INDの承認を受けたものの、かなりの時間を要した事例もあります。AbClon Inc.(174900)は2021年6月、CAR-T治療薬「AT101」の国内第1/2相臨床試験のINDを申請しましたが、最終承認を得たのは同年12月になってからでした。 食品医薬品安全庁の法定処理期間は30日ですが、実際の申請から承認までは約6ヶ月かかったことになります。当時、審査過程において医薬品製造・品質管理(GMP)や製造・品質管理(CMC)関連資料などに対する補完手続きを経たため、実際の臨床試験開始時期も当初の予想より遅れたケースです。
INDのハードルに引っかかったKバイオ…「30日審査」に6ヶ月かかることもキム・スンウォン法務部長官候補者が、2021年にジェネンセルの新型コロナウイルス治療薬の臨床試験計画(IND)を迅速に処理してほしいという趣旨で、当時のキム・ガンリプ食品医薬品安全庁長官に連絡した事実が明らかになり、製薬・バイオ業界の許認可に関する「働きかけ」問題が表面化しました。 キム候補者が連絡してから約2週間後の2021年10月26日、ジェネンセルの国内第2/3相臨床試験のINDは承認されました。
バイオ業界では、今回の騒動を特定の政治家と企業の逸脱行為としてのみ見ることができるのかという声も上がりました。食品医薬品安全処出身のあるバイオ業界幹部は、「食品医薬品安全処の許認可に関して、外部の人脈を動員して進捗状況を尋ねたり、処理を依頼したりすることは珍しいことではありません」と述べました。 また、別の業界関係者は、「外部には表れていませんでしたが、過去に勤務していた企業でも同様の依頼をしたことがあると聞いています」と打ち明けました。
国会を通じた陳情の伝達も珍しいことではないという話も出ています。国会のロビー活動に精通した業界関係者は、「国会議員の事務所には、企業や協会、選挙区などから様々な陳情が頻繁に寄せられており、そのうちの一部を議員が関係省庁の長官や機関長に直接伝えることも少なくありません」と述べました。
問題は、通常の陳情の伝達と、特定企業の許認可に影響を与えようとする不適切な介入との境界線です。INDのように患者の安全と科学的判断が求められる事案では、単なる進捗状況の問い合わせや迅速な処理の要請、審査結果に影響を与えようとする要求を区別する必要があるという指摘がなされています。
食品医薬品安全庁は「30日」としているが…バイオ企業「補完を繰り返すうちに1年を軽く超える」国内のバイオ企業が、公式な手続きではなく政界など外部の助けに頼らざるを得ない最も核心的な理由は、不確実性です。業界では、INDが実際に承認されるまでに要する期間や補完の範囲を予測することが難しい点を問題として挙げています。
バイオ業界の関係者は、「食品医薬品安全庁は、補完に要した企業の準備期間を除いて、実際に審査した期間を計算する」とし、「食品医薬品安全庁は30日以内に処理したと見なしているが、企業の立場からは補完試験まで含めて実際には1年以上かかるためだ」と説明しました。
例えば、食品医薬品安全庁が受付から20日目に追加の試験資料を要求し、企業がその作成に1年を費やした場合、その期間は食品医薬品安全庁の純粋な審査期間とは区別されます。企業が資料を再提出した後、食品医薬品安全庁が残りの期間で審査を完了すれば、食品医薬品安全庁が集計する審査期間と、企業が体感する全体期間との間に大きな差が生じます。
国内の臨床試験承認審査におけるボトルネックの主な原因としては、繰り返される補足要求と審査基準の不透明さが指摘されています。ある臨床試験受託機関(CRO)の代表は、「INDの法定処理期間は30日ですが、補足要求が繰り返されることで、実際には3ヶ月から1年以上かかる事例が少なくありません」とし、「米国と比較すると、審査のスピードは約4倍遅いです」と主張しました。
同氏は、「海外ですでに進行中の臨床試験でも、国内では追加資料の要求や却下につながる場合があり、国内企業が最初から海外で臨床試験を開始することが増えている」とし、「革新的な新薬の初回ヒト投与(FIH)臨床試験は、国内では事実上難しい」と批判しました。
INDが遅れれば投資も揺らぐ…バイオベンチャーを襲う「一本の電話」の誘惑小規模なスタートアップやバイオベンチャーの立場からすれば、IND承認は企業の存亡を左右するほど重要な出来事です。臨床試験への参入自体が、企業価値や資金調達に直結するからです。
新薬候補物質がINDを通過すれば、人体への投与が可能な開発資産として評価され始め、その後の投資誘致や技術移転の可能性も高まります。上場企業であれば、IND承認の可否が株価や企業価値にも直接的な影響を及ぼす可能性があります。
特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック当時は、治療薬の開発に乗り出したという事実自体が、企業価値上昇の材料として受け止められました。当時、巨額の投資資金を調達したにもかかわらず、当該候補物質が実際にINDや臨床試験を経て、製品承認まで至ることができるかどうかを十分に検証しなかった事例も少なくありませんでした。
バイオベンチャーの立場からすれば、IND審査の過程で補完要求が繰り返されたり、承認のタイミングが遅れたりすると、臨床試験のスケジュール全体が遅れてしまいます。資金枯渇の負担が大きくなるのはもちろん、その後の投資やパートナーシップのスケジュールにも支障をきたす可能性があります。新薬開発の経験や規制に関する専門人材が不足しているバイオベンチャーであればあるほど、予期せぬ補完要求をより大きなリスクとして受け止めざるを得ません。
こうした構造が、一部の企業を公式の手続き外の支援へと駆り立てる誘因となり得るとの指摘があります。企業が審査基準や補完の範囲、承認の時期を予測しにくいと感じるほど、審査がどこまで進んでいるのか、なぜ遅れているのか、少しでも早く処理できないのかを確認するために、元官僚や人脈、国会への陳情などに頼ろうとする誘惑が強まるということです。
あるバイオ業界の関係者は、「審査資料が不十分な状態でIND承認を急かしたり、外部からの圧力を通じて審査に影響を与えようとする行為は正当化できません」としつつも、「公式なコミュニケーションの過程でもどかしさを感じているため、非公式な接触に誘惑を感じる人々がいるようです」と述べました。
特に同氏は、「食品医薬品安全庁の組織と人員は拡大されたものの、産業界では審査のスピードやコミュニケーションの面で、その効果を十分に実感できていない」とし、「企業の責任を強化することとは別に、食品医薬品安全庁の審査システムも、予測可能性やコミュニケーションの面で改善する必要がある」と強調しました。
ただし、すべてのINDの遅延を食品医薬品安全処のせいにするのも問題だという指摘も出ています。国内のバイオテック企業の新薬開発経験の不足も原因だという指摘もあります。
食品医薬品安全庁出身のバイオ業界関係者は、「バイオテック企業の創業者や最高経営責任者(CEO)のうち、技術そのものはよく理解していても、実際に新薬を開発した経験まで兼ね備えている人は多くありません」とし、「INDや品目許可まで進めるためには、審査過程で何が問題になるかを逆算して、現在必要なデータを作成しなければなりませんが、国内には開発プロセス全体を見通せる人が多くありません」と述べました。